ペンギン・ハイウェイを観てきた(ネタバレ無し)
森見登美彦先生はつくづくアニメ化に恵まれている。
ノイタミナ枠でアニメ化された四畳半神話大系は、原作にオリジナルエピソードも加えつつ、鬼才・湯浅政明監督が中村佑介さん原案のキャラクターを活き活きと動かしてくれた。
アレ見て京都に行きたくなくならない人は居ないと思う。アジカンが無性に好きになり、無駄に京都の地名だけは詳しくなり、モリカゲシャツが欲しくて堪らなくなり、鴨川デルタを見るだけで狂喜乱舞し、鴨川沿いを歩きながらモノローグ部分をブツブツと呟くようになること間違いありません。実際、私はなりました。(余談だが、翌年の坂本真綾さんの結婚に対しての浅沼晋太郎さんのツイートが良いオチ過ぎて、この作品の愛され具合がわかる)
続いてアニメ化された有頂天家族。P.A WORKS制作に漫画家の久米田康治さんがキャラクター原案と、喜んで良いんだか分からない内容でしたが、放送されたら四畳半神話大系と同様に細かい京都の描写、モフモフの可愛い狸、癖のある久米田キャラをマイルドにしつつ、まさに阿呆を画面全体に描いてくれました。海星や赤玉先生と矢三郎の関係性とかが非常に良い改変されております。
おかげで下鴨神社で猫ラーメン探しがてら狸を探したり、四条南座近辺にに行ってみたくなったり、如意ヶ嶽思ったより遠いと断念したり、六道珍皇寺の限定公開に合わせて京都旅行してみたりした人も多いはず。実際、私はなりました。
そして、昨年の夜は短し歩けよ乙女。四畳半神話大系のスタッフが再集合した劇場用アニメ。何で今更?何で星野源?1年が1日になるの?と心配でしたが、観てみると四畳半神話大系と同様の軽快なテンポで森見登美彦の作品を見事に映像化してくれました。ストーリー的に終盤がトーンダウンしてしまうのは仕方ありませんが、学園祭の偏屈王は原作より数段良くなっており、事務局長も可愛かった。四畳半神話大系や夜明けを告げるルーのうたからのゲスト登場も良かったし、なりより四畳半神話大系の私と明石さんを無理やり出さなかった点は素晴らしかった。
こんなの見せられると、行くの面倒だけど京大の前まで行きたくなるし、お金はないけど木屋町をブラブラしたくなるし、いつかは下鴨納涼古本市に行ってみたいと思えてくる。
ちなみに観た時の感想。
こんな感じで3作品がアニメ化されているのだが、ここまで絶賛する理由の一つが、「文章だけより分かりやすい」という点だ。そもそも複雑怪奇なワールドが展開される森見登美彦作品、漠然としたイメージは湧くのだが、独特の言い回しや文体で半ばトリップしたような感じで読むので、読了感はフワフワしてなんとなく読んだ感じに。それをアニメは映像で補填してくれるので本当に助かる。正直「そこってそういうシーンだったんだ!」って言うのも何個かある。
前置きが長くなったが、今回のペンギン・ハイウェイ。書籍版は読んだことあるのだが、感想は「なんか分からなかったが、お姉さんのオッパイの事だけ印象に残った」のみ。前述の通り貧相な頭では想像が出来なかったのだ。数回読み直せば良かったのだろうが、1回で止めてしまってた。
言い訳になるが、前の3作のようなゴリゴリ京都を舞台にしているわけではなく、どこの県にもありそうな、そこそこ郊外にある住宅地の話であり、摩訶不思議な現象もSFチックになっていて、なにより前3作のような阿呆な部分が無いのだ。ペンギンは可愛いけど、主人公以下みんな賢い。なんというか、共感できない。馬鹿なら良いってわけじゃない、阿呆が欲しかった。京大に通おうと、全て周囲のせいにして、自らの無限の可能性を信じたり、なんとなく彼女の目に止まろうしたりする阿呆が欲しかったのだ。小学生なのに大人びた口調で話して、良いノートに記述して纏める生意気な主人公とか要らないのだ。それ以上に袋からチョコ出したり、的確なアドバイスを与える完成された大人像な主人公の父親とか嫌だった。意味分かんないよ!お前なんなの?
という感じで、好きか嫌いかで言ったら正直嫌いな作品だった。それのアニメ映画化である。スタッフも今までとは違う。作品の空気が違うのだから仕方ない。主題歌は宇多田ヒカル、声優も俳優多め。あかん、これは駄目だ。せめて死に水は取ってやろう。そんな気持ちで観に行った。
いや~面白かった。内容分かんないとか言ってた自分が恥ずかしい。スタッフの皆さん、綺麗な映像で補填してくれてありがとうございました。お姉さんのリアルなオッパイは凄かったです。ブラしつつも豊満さを感じさせる重量感を見事に描いていました。一歩間違えればオネショタになりえるのに、安易な萌えに頼らない潔さ。そして蒼井優の上手いんだか下手なんだか分からない演技が気怠げなお姉さんにマッチしていて最高でした。もうオネショタで良いわ。
主人公のアオヤマ君も、文章だけでは可愛げがなかったのですが、映像となると表情がつき声が付き、細かな心情が分かるようになって、小生意気なガキから変に背伸びしている少年へと印象が変わりました。この作品には嫌な奴とか居なかったんだ!
居たわ!アオヤマ君のお父さん。
先に言っておくが、西島秀俊が駄目なんじゃない。このキャラが嫌いなんだ。ラ王とか生涯食べそう無い、袋からチョコ出して、作品の根幹に関わる事言ったりしてるけど、偉そうに高そうな喫茶店でコーヒー飲みやがって、映像になって余計嫌いになった。なんで嫌いなのかもう分かんない。というか、ぶっちゃけどうでも良い。本来の憎まれ役のスズキ君より嫌われている。早く諏訪辺りで逆さに湖に刺さって欲しい。
とは言え、ストーリーは丁寧に語られていて、作品上で起きている現象の理由やお姉さんについては、ちゃんと描かれています。居るか分かりませんが、原作の感想が微妙だった人は是非観てください。補完されてスタッフに五体投地礼したくなります。原作ですでに満足している方も、アニメで更に上行きましょう。決して悪くはなりません。脚本も四畳半神話大系や夜は短し歩けよ乙女と同じ上田誠さんなので安心です。映像は本当に綺麗です。終盤のシーンとか4DXでも良いくらい。スタジオコロリドさん凄かったです。
もちろん万人にはオススメ出来ません。例えば全てに説明がないと駄目な人。2割くらいは謎のままです。でも、主題はちゃんと解き明かされます。面倒な人は原作買って最後のページ読んでください。この映画は、そこに行き着くまでの道程にSFがくっついてるだけです。ぶっちゃけペンギンとかどうでも良いんですw
こうなると、この作品と同じくらいの印象な「夜行」のアニメ化を期待してしまう。あの理不尽でどうしようもない内容を是非映像で観てみたい。
とにかく、オススメ出来ます。エンドクレジットの後に特典映像とか無いので、訳わかんね、ツマンネ、って人はED始まったら帰っても良いので、とりあえず観てください。でも、観たらとりあえずホッコリ出来ます。
ちなみにパンフレットは800円。微妙な価格だが、インタビューとアオヤマ君のノートの中身が見れるので補完には便利。
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原作。
子供向け。オッパイどうすんだ?
名作。京都行きたくなる。
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
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名作2。四畳半神話大系を観ておくと更に倍。
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毛玉枠。可愛い。
これはアニメ化しないかな?